同級生の日
数日前、道を走っていると某運送会社のトラックが前を走っていた。
そのトラックの後ろに書いてある名前を見て、小中学時代の同級生の顔が浮かんだ。
彼の名前は凄く珍しいのだ。
だからとっさではあったが「彼だ」と確信出来たのだ。
だが、その時は急いでいたので、それだけだった。
そして今朝、彼が奥さんへの荷物を届けに来たのだ。
最初は分からなかった。
何せ15年ぶりである。
どこかに面影が残っているようだが確信は出来なかった。
だが彼が帰りに乗り込んだトラックを見て確信した。
彼だ。
そんな彼も何となく「何処かで会ったような…」
と思っていた筈だが、立場上「何処かでお会いしましたっけ?」なんてお客には聞けないだろう。
彼の実家はうちの近所にある。
最も今、そこに住んでいるのか分からないが。
まあ、これで彼と今後会う機会もあるだろうから、今度は声をかけてみたいと思う。
お客からなら大丈夫だろうしね。
今日は、そんな始まりで調子が良かったのかセッションが早く終わった。
そこで以前から気になっていた出前をとる事にした。
その店とは中学・高校時代の親友の店である。
彼は中学に上がったと同時に隣町から引っ越して来た。
初めて彼に会ったのは、おこたんの保育園の下にあるグラウンド。
小学校を卒業した春休み、野球をしていた所に友達が彼を連れて来たのだ。
その後、彼とは仲良くなり、いつも登下校は同じ、いつも遊ぶのは一緒という感じだった。
中学3年間はまさに彼といつも一緒だったようなものだ。
彼の家はお好み焼き屋さん。
彼のお父さんは料理人で、お母さんが自宅の1階でお好み焼き屋をされていた。
よくおやつに氷をかいてもらったり、焼きうどんを作ってもらったりしたものだ。
お好み焼き屋さんの焼きうどんはとてもシンプルだがもの凄く美味しい。
彼のお父さんは隣町の会員制リゾートホテルの料理長だった。
彼は学校に内緒でそこでバイトしていた。
当時1,000円ぐらいしかお小遣いの無かった俺は、どんどん欲しいものを手にしていく彼がとても羨ましかった。
そこで俺もバイトさせてもらえないか頼むと心良くOKしてもらえた。
時給は250円。
あくまで社会勉強だ。
これは俺の金銭感覚が麻痺しない為への配慮だった。
俺はバイトにいそしんだ。
朝、厨房に入って皿洗い。
いわゆる朝食の後片付けだ。
次が各部屋の布団上げと掃除だ。
その後、ロビーと風呂を掃除して前半は終了。
ここで家に帰る。
夕方、また出勤して夕食の準備のお手伝い。
夜になると各部屋を回って布団ひきという具合だった。
このバイトの美味しい事とはまさに美味しい事だった。
なぜならプロの板前が作った料理をお腹一杯食べられるのである。
それも一日3回も。
当時、成長期で大食らいだった俺にとって、これは本当にいいバイトだった。
長期休みの時なんかは5万円以上も貰えた事もあった。
高校生になると彼と同じ部活に入った。
だが俺が怪我で退部すると少し距離が開いた。
俺はここから音楽に傾倒していく事になる。
リゾートホテルでのバイトはそんなに長く続けなかったが、高校1年生の冬休みに期間限定で復活した。
その時は彼はそこでバイトしていなかったが、勝手知ったる職場だ。
何も問題無かった。
流石にこの時は時給550円貰っていた。
高校を卒業して彼は京都のホテルに就職した。
俺は同じ京都でも大学に進学したので疎遠になる。
一度、彼が祇園祭の宵山の日に大学に遊びに来た事があったが、それっきりだった。
ここで転機が訪れる。
例のリゾートホテルが廃業する事になったのだ。
彼のお父さんは京都の料理屋まで始発電車で通っておられたが、「どうせなら」と、自身でお店をされる事になった。
お父さんと彼の二人の名前を一文字ずつとった名前の店だ。
彼も喜んでサポートすべく仕事を辞めた。
こうして京都の伏見に1軒の店がオープンした。
1階が店舗で2階が住居。
彼の家族は、これまでいた家を空けておいたのだ。
俺がこの事を知ったのは彼から案内状が届いたからだ。
身分違いかな?と思いつつ、当時の親友だったBちゃんとふなちゃんと3人で一度食事に行った。
喜んだ彼のお父さんは破格の値段で沢山ご馳走して下さった。
その味を気にいった俺は、その後のライブの打ち上げでは彼の店を使うようになった。
滋賀でライブが終わった後、わざわざ峠を越えて京都まで移動するのだ。
その後、俺が神奈川に移ったので、また疎遠な時期があった。
それから3年が経って、こちらに戻ってきた。
当時、付き合っていた(今は)奥さんにもあの味を食べさせてあげたいと思い、わざわざ京都まで出向いた。
だが、その店のあった場所には別の店があり、その店すら潰れている始末だった。
俺は移動した事を願い「104」に電話して聞いてみたが、やはり分からなかった。
その後、風の噂で彼らが元の家に戻り小料理屋を始めた事を知る。
ただ、あそこは場所が良くないのだ。
駅からも遠いし、何せ奥まった場所だから人もほとんども通らないのだ。
そこで宅配中心になる。
この頃、俺は野洲にいたのだが、実家に寄った帰りに彼の家に寄った事がある。
その時はバイトの子一人だけだった。
その後は俺も忙しくて彼の事をすっかり忘れていた。
今年に入って彼の所が居酒屋をやってみたり、最近では宅配専門店になった事を新聞の折込み広告で知った。
そこで今度こそ一度、頼んでみようという事になった。
この日、久々に5分ぐらいだったが話せた。
彼の所も大変なようで、うちと同じく年中無休態勢らしい(笑)
お互いの近況を確認出来た事で、また新たな展開が始まりそうだ。
そういえば奥さんの職場に俺の中学1年の時の同級生がいるらしい。
うちの中学校は生徒の人数が多くなりすぎて、中2の時、2校に分離してしまった。
彼女とはその時に離れてしまったし、さして仲が良かった訳ではない。
だがそうやって瞬時に昔の記憶が甦りやすいのは職業柄だろう。
今日みたいな事が重なるとやはり「偶然」は「必然」だと思える。
この記事を書いた人 Wrote this article
鷹宰 葵 鷹宰心理療法所:所長、公認心理師、催眠療法士(ヒプノセラピスト)、公認心理師実習指導者、ストレスチェック実施者、両立支援コーディネーター
精神力動論的立場。 専門はPTSD、複雑性PTSD、アディクション(依存症)、パーソナリティ障害、解離性障害、機能不全家庭、アダルトチルドレン、HSP、性格因等のメンタライゼーション的なパーソナリティへのアプローチ(精神力動アプローチ)。 心理学、精神医学、スピリチュアルに基づいた時間をかけた丁寧なカウンセリング・セラピーが信条。 琵琶湖の畔で一人気ままに活動中。 たまに医療領域にも出没。